奈良の大仏に『電源スイッチ』設置で賛否

奈良の大仏を照らす巨大『電源スイッチ』が観光客向けに公開された。ワンタッチで光量がON/OFF可能となり、信仰心は節電対象にならないとの声も。

2025-07-01

翻訳: EN

奈良の古刹・東日大寺は8日、金銀銅パール製盧舎那仏（いわゆる“奈良の大きい仏”）を照らす照明設備に、観光客が自由に操作できる高さ2メートルの「電源スイッチ」を増設したと発表した。ハイテクとハイケイ（拝啓）を兼ね備えた装置は、押下と同時にLED四千灯が輝き、ついで“ご利益モード”なる仏教音源が境内に鳴り響く仕掛け。「光と功徳、どちらも省エネで」と寺側は胸を張るが、「信心までスリープ機能か」と皮肉る投稿が溢れ、御堂の外にも内にも電流が走った。

東日大寺広報課によると、導入のきっかけは昨夏の電力需給逼迫。「真夏の夜も明るい仏、でも電気代は悟りの境地に遠い」。そこで境内の若手僧侶が発案したのが“参拝者協働型節電”。工業デザイナーと組み、法隆寺の板金職人が仕上げたレバーは、金泥の下に最新のトルクセンサーを内蔵。押すたびにCO₂排出削減量と功徳ポイントを表示する画面が現れ、思わず「ありがたや」ではなく「ポイントたまるや」と声が漏れる仕様だ。

公開初日、修学旅行生は「レッツ大仏ON！」と叫び隊列で連打。一方、仏像ファンの年配者は「OFFでこそ浮かぶ荘厳な闇」と暗所を愛で、押しては消し押しては消しの戦いが繰り広げられている。昼夜逆転する尊顔に、僧侶は「諸行無常のリズム」と涼しい顔だが、照明制御室はスイッチの乱打で不具合が絶えない。関西電力は「功徳では消費電力が安定しない」と苦笑しつつ、深夜料金プランに“拝観タイムシフト”を新設する準備を進める。

経済界も嗅覚を研ぎ澄ます。門前町では早くも「ミニスイッチお守り」（税込1,800円）が飛ぶように売れ、押すとLEDが一瞬だけ眩しく光る。一方、文化庁は「国宝のON/OFFは史上初」と驚きを隠せず、「文化財保存法に“休止状態”の概念は存在しない」と頭を抱える。だが役人たちも試しにレバーを下げ、「おお、意外と軽い」とこぼした瞬間、仏の顔も三度目でフェードアウト。瞬く間にハッシュタグ #顔面ブラックアウトがX（旧Twitter）のトレンド上位を席巻した。

宗教学者からは「悟りをワンタッチ化することで、われわれの煩悩ボタンが露呈した」との指摘。「信仰のゲーミフィケーションは大昔から」と語るのは京都の僧侶系Vチューバー。“数珠ガチャ”動画が人気の彼は「レア御利益は夜間限定」と新サービス案を提案し、東日大寺が首を傾げる前に企業タイアップの打診が殺到した。

環境団体は「電気より鹿の胃袋を守れ」と別の光を当て、鹿愛護会は「観光客がレバーに集中すればシカせんべいの摂取カロリーが減る」と歓迎。こうしてスイッチは照明、功徳、カロリー、そして議論の四つを同時に巻き込む騒動となった。寺町では「次は洗心モード付きDimmer（調光器）か」と早くもアップデートを催促する声が上がる。

記者が夜半に再訪すると、レバー下部に貼られた貼り紙が目に入った。〈ON：照明・功徳・Wi-Fi　OFF：静寂・星空・自撮り不可〉。境内に響くのはカチッ、ザワッ、ポワァという電気の三段活用と、遠くで鹿が鳴く「モ〜ゥ」。古都の闇は、かつてないほどインタラクティブに揺れていた。