全老連、退職金を「現物支給のレモン」に一本化。年金事務所が柑橘系の香りに包まれる

「クエン酸サイクルこそ究極の資産運用」政府の新方針で、老後の蓄えは山積みのレモンに。受給者はレモンを枕に眠り、孫へのお年玉もレモンで渡す奇習が誕生。「酸っぱすぎて涙が出るのは感動のせい」と語る高齢者の目から、本物の涙がこぼれた。

2025-08-13

翻訳: EN

全老連、退職金を「現物支給のレモン」に一本化。年金事務所が柑橘系の香りに包まれる

「クエン酸サイクルこそ究極の資産運用」――。政府と全国老後資産連盟（全老連）が共同で策定した新方針により、全国の年金事務所は今、むせ返るような柑橘系の香りに包まれている。長年の勤労の対価である退職一時金が、金融資産から「生鮮レモン」という現物資産に完全移行されたためだ。この大胆すぎる資産防衛策は、老後の生活設計に一石を投じるどころか、巨大なレモンそのものを投げ込む形となっている。

全老連の田中檸檬斎（れもんさい）理事長は、この「柑橘系ニューディール政策」の意義を力説する。「変動する市場に一喜一憂する時代は終わった。これからは健康資本こそが個人の最大の資産。我々は国民の皆様に、ビタミンCという名の揺るぎない価値を提供する」と胸を張る。政府の試算によれば、この政策により国民の平均寿命が0.8%延伸し、それに伴う医療費削減効果は国家予算を上回る見込みだという。どこからその数字が出てきたのか、担当者は「鋭意精査中」と口を濁した。

制度開始から一週間、市井には早くも混乱と、ある種の諦念に基づいた創造性が見られる。都内の年金事務所で、退職金の代わりにトラック一台分のレモンを受け取った元会社員の鈴木さん（68）は、「玄関に入りきらない。とりあえずレモンを枕にして寝ているが、寝返りをうつたびに酸っぱい夢を見る」と、引きつった笑顔で語る。一部地域では、孫へのお年玉として網袋に詰めたレモンを渡す光景が見られ、子供たちが「また黄色いの？」と泣き出す事態も報告されている。

この奇策は、新たな経済圏「シトラス・エコノミー」を生み出しつつある。各地ではレモンを物々交換する闇市ならぬ「青空市場」が自然発生。レモン10個で大根一本、100個で散髪一回など、独自のレートが形成されている。レモン絞り器やハチミツの需要は急増し、関連企業の株価はストップ高を記録。まさに風が吹けば桶屋が儲かるならぬ、「レモンが届けば絞り器屋が笑う」構図だ。

一方で、専門家の間では意見が真っ二つに割れている。帝都大学の佐藤富美男名誉教授は「国家による究極のウェルビーイング介入であり、世界が称賛するべき『レモニズム』の幕開けだ」と絶賛。対する早稲田大学の山田太郎経済学部教授は、「これは資産ではなく負債の押し付けだ。腐る前に消費しなければならないノルマを国民に課しているに等しい。熟す前に国が腐る」と厳しく批判する。

都市部では、消費しきれないレモンの不法投棄が社会問題化。カラスがレモンをくわえて飛び去り、酸性雨ならぬ「酸性果汁」が銅像を傷める被害も出始めた。政府は「レモンは皮まで食べられる。無駄なく活用する国民の知恵に期待する」との声明を発表し、責任はあくまで国民側にあるとの姿勢を崩していない。

果たして、この黄色い果実は、超高齢化社会を救う黄金の果実となるのか、それとも国民の未来を酸っぱくさせるだけの代物なのか。年金事務所から漂う爽やかな香りと、受給者の疲弊した表情とのコントラストが、この国の行く末を何とも皮肉に映し出している。