陰謀論を毎週配給、政府が情報不足宣言

政府は「情報不均衡」の解消を名目に、陰謀論を住民基本台帳に基づき週1本ずつ配給すると発表。SNSでは「公式が陰謀を認定した瞬間に陰謀じゃなくなる」として、早くも配給品の価値暴落が懸念されている。

2025-06-30

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情報管理庁の会見は8日午前、「自由で適量なデマの享受は基本的人権」と題するパワーポイントで幕を開けた。担当官は「フェイクニュースは多すぎても少なすぎても民主主義の味が薄まる」と力説し、三角食べの要領で「真実・虚構・誤訳」をバランス良く摂取する必要性を訴えた。聞き慣れぬ栄養指導に報道陣は最初こそは戸惑いを見せたが、次第に「陰謀論は国民の心の栄養」として受け入れ、会場は拍手喝采に包まれた。

配給方法は昭和の米穀通帳を彷彿させる“陰謀引換券”方式だ。住民は毎週火曜、役所の窓口か専用アプリ「CON-CAN」でクーポンを受領。木曜までに最寄りの情報販売所で交換すると、アルミ包装された「今週の陰謀」が1本支給される。中身はQRコードのみで、読み取ると政府公認ストーリーが48時間視聴可能になる仕組み。おかげで紙媒体はゼロ、証拠も残らないサステナブルな仕組みだ。

ところが市場原理は冷酷である。発表直後、闇論壇サイト「黒いWikipedia」では既に転売価格が原価の1/100に急落。「政府印付きの陰謀は、シュレディンガーの猫が箱から出た後と同じ」と嘆くコア層に対し、経済評論家は「流通量が増えれば希少価値が下がるのは缶詰でもデマでも同じ。これぞ健全なデフレ」と分析した。

SNSは“供給ショック”に沸騰。ハッシュタグ #陰謀値下がり祭には「次はポイント還元お願いします」「買いだめしてた都市伝説が紙くずに…」など怨嗟と自虐が交錯した。中でも人気配信者“電波ババア”は配信中に「公認陰謀」を読み上げた瞬間、同接数が半減。「ネタバレは文化の敵！」と怒号が飛び、コメント欄は陰謀の墓場と化した。

行政の現場も奔走している。ある地方自治体では配給初日に職員が誤って前年の“5Gで脳がWi-Fi化”説を配布。住民から「それ去年の賞味期限」と指摘され、回収用ドローンが街を旋回する騒ぎとなった。回収作業に当たった職員は「いつもは確定申告書を誤配するだけだったのに」と疲労困憊だ。

海外からは賛否入り交じる。EU委員会は「知的ジャンクフードの計画経済化」として懸念を表明。一方、連邦陰謀大国のフリードニアは「供給管理は当局の義務」と歓迎し、同国の陰謀輸出企業株はストップ高。国際相場で“陰謀バレル”が乱高下するさまは、まさに真偽不確かな世界経済の縮図である。

識者の間では心理的影響にも注目が集まる。東都大学ストレス学研究室は「人は“政府が配る程度の陰謀”に対しては怒りより失笑を覚える」と指摘。偽情報が公式化された瞬間、「怖い話」が「滑稽な与太話」に変換される脳内メカニズムを“笑撃緩和効果”と名付けた。政府が国民のメンタルヘルスに貢献している可能性を指摘した。

もっとも、情報の自由市場を愛する市民団体は「陰謀論は自生こそが風味。養殖品は味気ない」として配給制度の撤廃を要求。政府は「安定供給と個人栽培は両立する」と弁解するが、庭先で陰謀を自家栽培する市民が取り締まりの対象になる日は遠くない。

制度は始まったばかりだが、既に配給陰謀の賞味期限と信頼期限は同じスピードで切れている。次週のメニューは「月面ウサギ政府説」と噂されるが、配給列の先頭に並ぶ市民の背には「信じないけど一応もらう」背徳の影が揺れていた。