メタバース残業、会社が“休憩アバター”支給

長時間労働が問題視される中、IT企業が“休憩アバター”を導入。社員の分身が仮想オフィスでストレッチしている間、本人は現実でさらに働き続け、労基法はログアウトの定義を再検討している。

2025-07-24

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メタバースの潮流が“働かせ方”にも波及した。都内IT大手ナナメソフトウェア社は9日、全社員に「休憩アバター」を配布すると発表した。分身は仮想オフィスで腕回しや深呼吸を実演し、休憩レポートを自動送信。現実の社員は隣席の先輩が倒れる音をBGMに、黙々とコードを打ち続ける。「身体が疲れたら心で働ける」と同社の広報担当は胸を張るが、心の残業代は非課税のままだ。

アバターはAI駆動で、午後3時になると自主的に“のびのびモード”へ移行。ポリゴン製の背筋を伸ばし、「カフェインはご利用は計画的に」とチャットで呟く。リアル社員がトイレにも行けず固まっている間、サイバー分身は仮想カフェでオーガニックコーヒーをテイスティング。「内なる健康経営を可視化した」と開発責任者は胸を張るが、外なる目の下のクマは深化する一方だ。

労働基準監督署は「アバターが休憩している間、労働者本人が働いていないと会社が信じているなら、それは信仰の自由に近い概念」と苦笑。ログアウトを“現世離脱”と定義し直す検討会が立ち上がったが、委員から「では夢の中で働く夢は労働か」の質問が飛び、議論は睡眠不足の沼にはまった。

社員側も黙ってはいない。若手エンジニア有志は自動コーディング・ボットを組み込み、「アバターが休憩、本人が労働、ボットが成果」という三位一体モデルを構築。上司は「みんながチームワークで頑張っている」と感涙したが、労働実態は誰も把握できなくなり、KPIは禅問答と化した。

経済界は「分身による休憩」は世界初の“休憩の外部委託”だと高く評価。株式市場では「RPA（休憩代行自動化）関連銘柄」が急騰した。しかし健康保険組合は「アバター用ストレッチ動画の再生回数では医療費は下がらない」と指摘。仮想筋肉痛は治療費ゼロでも、現実肩こりは保険財政を直撃する。

国際労働機関（ILO）は声明で「人間の休憩は人間が行うことが望ましい」と、当たり前すぎて翻訳者が居眠りする一文を発表。ナナメ社は「人類初の“働きながら休む”実証実験は続く」とさらなるアップデートを予定している。次期バージョンではアバターが有給を取得する予定だが、本人は誰に代わってもらえばいいのか、依然メタ的霧の中である。