派遣マッスル、イベントごとに借り放題

パーティー映え需要に応え、筋肉専門の派遣サービス『マッスル・レンタル』が始動。1時間から契約可能で、平均契約理由は同窓会での元カレ対策。使用後はプロテインで洗って返却するルールだ。

2025-07-28

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首都圏の隙間時間に、宅配便のように届くのは段ボールではなく大胸筋だ。運営会社のタンパク質ソリューションズ社は十日、都内で記者会見を開き「筋肉は買う時代から借りる時代へ」と胸を大いに膨らませた。利用者はアプリで日時と“部位オプション”を選択し、クリックから最短30分で屈強な笑顔が玄関に立つ。料金は60分1万2千円。深夜料金も付くが、深夜にはとくに上腕三頭筋が映えるというマーケティングデータを添えてきたあたり、闇夜に光るのは月だけではないらしい。

サービスの目玉は「リターン・クリーニング方式」。使用後のレンタルマッスルを返却する際、利用者は付属のシェーカーにWPIプロテインと水を入れ、飲ませてから送り出すのが義務だ。「洗浄と栄養補給を同時に行う日本初のサーキュラー・ボディモデル」と同社は胸筋ならぬ胸を張る。もし返却時にタンパク質残量が不足していると「遅延栄養ペナルティ」が加算される仕組みで、人より財布がダイエットするリスクもある。

一方、労働政策研究機構は「人材派遣法で“高度に発達した筋繊維”をどのように定義するかが課題」と指摘。厚労省は早速「筋疲労残業」の可視化を検討し始めたが、当の派遣筋たちは「翌日もベンチプレスだから残業歓迎」と涼しい顔。ホワイトカラーをブラックに染める残業問題が、ここではブロンズ色に日焼けしている。

マーケティング調査会社セルフィー白書によると、同サービスの主な契約動機は「旧友より厚い胸板でマウンティングしたい」が41％、「元恋人の記憶をバルクアップで上書きしたい」が27％、「集合写真でPhotoshopを使わずに済む」が19％。残り13％は「ただ触ってみたかった」という直球の欲望で、欲望の潔さもここまで来れば清々しい。同書は「マッスルは令和の着ぐるみ」と結論付けた。

国際展開も視野に入る。海外からは「洗って返す」文化に驚嘆の声が上がり、特にイタリアでは「エスプレッソを飲ませたら追加料金か」と議論が白熱。運営会社は「液体であれば可」と即答し、筋肉とカフェインの国際協調が成立した模様だ。市場規模は2028年に国内だけで1,200億円と試算され、GDPの筋率（GDP比筋肉産業比率）はついに1％に届く見込み。政府は新たな統計項目「タンパク民需」を創設しようとするが、担当課は「円高より肩幅が広がる方が景気に効く」と冗談めかしている。

利用者の声はおおむね好意的だが、一部からは「レンタルしている間に自分が筋トレしなくなる」という“代行依存症”への懸念も漏れる。これに対しサービス側は「自己努力は精神論。筋肉は外注する時代」と真顔で応酬。精神論が折れた瞬間、ダンベルはスマホに姿を変えた。

さて、本紙記者も試しにレンタルしてみたところ、到着したバイセップス氏は玄関で自撮りの角度を指導する気配りも欠かさず、「光の当て方は左上45度」と指示。記者のノートより、彼らの血管の方が情報量に富んでいたことを最後に報告しておく。