「いいね！」は命がけ。政府、危険な絶景をガチャ課金制の撮影スポットに。特賞は「ドローンによる即時救助」

転落事故のたびに炎上するSNS対策に、政府が最終回答。危険な崖を「映えガチャ・クリフ」として有料開放。入場券（生命保険付き）を購入し、崖っぷちで撮影。追加課金で「映えるヘルメット」や「奇跡の一枚を撮るドローン」が当たる。なお、救助隊の到着時間はプランによって変動する。

2025-11-05

翻訳: EN

社会実験室

「いいね！」は命がけ。政府、危険な絶景をガチャ課金制の撮影スポットに。特賞は「ドローンによる即時救助」

後を絶たない絶景スポットでの自撮り事故と、そのたびにSNS上で巻き起こる「自己責任」論争。この不毛なループに終止符を打つべく、政府は26日、デジタル社会推進本部と観光庁の合同プロジェクトとして、国内有数の断崖絶壁を「指定管理絶景区域・映えガチャ・クリフ」として有料開放する新制度を発表した。これは、承認欲求という名の現代病を逆手に取り、安全管理と経済活性化を一挙に解決しようという、前代未聞のソリューションだ。

利用者はまず、入場ゲートで「自己責任宣誓書」に署名し、最低保証の生命保険が付帯した入場券（5,000円）を購入する。その後、崖に設置された巨大ガチャマシンで運試し。1回500円の課金で、N（ノーマル）の「ただの命綱」から、SR（スーパーレア）の「有名ブランドとコラボした映えるヘルメ-ット」、SSR（ダブルスーパーレア）の「AIが完璧なアングルを提案する撮影ドローン」といった豪華景品が当たる。

中でも目玉は、確率0.01%で排出されるUR（ウルトラレア）、「ドローンによる即時救助権」だ。万が一足を滑らせても、最新鋭の救助ドローンが文字通り飛んできて即座に回収してくれるという、まさに究極のセーフティネット。政府担当者は「自己責任の原則は守りつつ、射幸心を煽ることで安全への投資を促す。これは持続可能なリスク管理の新しい形」と胸を張る。

しかし、この制度の真骨頂は、課金額に応じて変動する「救助プライオリティ」にある。高額な「プレミアムレスキュープラン」（月額10万円）に加入すれば、URの有無に関わらず救助隊が最優先で駆けつけるが、「エコノミープラン」（入場料のみ）の利用者は「他のお客様の救助が完了次第、順次向かいます」とのアナウンスを受けることになる。命の値段が、サブスクリプションのランクで決まる時代の到来だ。

このあまりに資本主義的な施策に対し、一部の人権団体からは「命の差別だ」と批判の声も上がる。しかし、ネット上では「自分の命に課金するのは当然」「これで迷惑なインフルエンサーが減るなら歓迎」といった意見が多数を占め、現代社会の歪んだ自己責任論を浮き彫りにしている。

社会倫理学者の有栖川マナブ教授は、「これは倫理観そのものが崖から滑落したに等しい。しかし、リスクを商品化し、個人の選択としてパッケージングした手腕は、マーケティングの観点から見れば見事としか言いようがない」と、呆れとも感嘆ともつかない表情で語った。

すでに「映えガチャ・クリフ」の周辺には、奇跡の一枚を狙うインフルエンサーたちが長蛇の列をなし、崖下からはガチャのハンドルを回す軽快な音と、時折、風に乗って微かな悲鳴が聞こえてくるという。政府は今後、このモデルを全国の危険地帯に展開し、「ダークツーリズム2.0」として海外観光客の誘致も図る方針だ。

果たしてこの試みは、自己責任時代の新たな地平を切り開くのか、それとも社会の倫理観を崖下へと突き落とす愚行なのか。我々は、スマホの画面に流れる「いいね！」の数と、救助隊の到着時間を、固唾をのんで見守るほかない。