「クマはベンチプレスで説得せよ」市役所、害獣対策に日本初のマッスル条例を可決

クマ出没問題、ついに終止符か。とある市役所は「対話より対筋力」をスローガンに、ボディビルダーによる「マッスルパトロール隊」を発足。隊員はクマと遭遇時、威嚇のポージングを義務付けられる。しかし最近、森の奥からプロテインシェイカーを振る音が聞こえ始め、クマたちが逆にバルクアップを始めたとの未確認情報が寄せられている。

2025-11-17

翻訳: EN

筋肉アリーナ

長年、全国の自治体を悩ませてきたクマによる獣害問題。電気柵、捕獲、専門家による生態調査など、あらゆる手段が講じられてきたが、抜本的な解決には至らなかった。この膠着状態を打破すべく、山々に囲まれた麗峰（れいほう）市議会は今月、全会一致（一名棄権、理由は「ぎっくり腰」）で「筋力による野生鳥獣との共存推進条例」、通称「マッスル条例」を可決した。

条例の核となるのは、市が独自に編成した「マッスルパトロール隊」の設立だ。採用基準はベンチプレス150kg以上、またはそれに準ずる「圧倒的な説得力」を持つ者とされ、公募には全国の猛者たちが殺到した。彼らの任務は至ってシンプル。クマと遭遇した場合、銃や麻酔ではなく、鍛え上げられた肉体を駆使したポージING、すなわち「ダブルバイセップス」や「ラットスプレッド」といった威嚇の型を披露し、クマに霊長類としての格の違いを見せつけ、自主的な撤退を促すというものだ。

「言葉が通じぬ相手だからこそ、万国共通の言語である『筋肉』で語りかけるべきだ」。そう語るのは、条例を推進した筋肉隆々の田中市長だ。市長は議会で、自身の減量期の体験談を交えながら「対話のテーブルに着かせるのではなく、我々が畏怖の対象となることで、互いのテリトリーを尊重する新たな関係が築ける」と熱弁。その力強い上腕二頭筋が、疲弊した議員たちの心を掴んだのは想像に難くない。

当初、この「上腕二頭筋外交（Bicep Diplomacy）」は功を奏したかに見えた。パトロール隊がポージングを始めると、多くのクマは未知の生物の奇妙な動きに困惑し、すごすごと森の奥へ引き返していったという。市民からは「孫が泣き止んだ」「安心感がすごい」といった声が寄せられ、市のウェブサイトは一時サーバーがダウンするほどの注目を集めた。

しかし、平和は長くは続かなかった。ここ数週間、山中から奇妙な音が聞こえるとの報告が相次いでいるのだ。「シャカ、シャカシャカ…」というリズミカルな音、そして時折聞こえる野太い雄叫び。さらに、パトロール隊員からは「遭遇したクマの肩幅が、前より明らかに広くなっている」「爪痕の横に、不自然なほど深くえぐれたダンベルのような跡があった」との証言が寄せられ始めた。

極めつけは、登山者によって発見された巨大なプロテインの空容器だ。市は当初、「隊員の忘れ物だろう」と静観していたが、容器に付着した体毛がツキノワグマのものとDNA鑑定で一致。ここにきて「クマが我々の戦術を模倣し、自ら肉体改造に乗り出したのではないか」という、にわかには信じがたい仮説が現実味を帯びてきた。

市は緊急対策会議を招集し、パトロール隊のトレーニングメニュー強化と、プロテイン予算の増額を検討している。人間とクマ、双方による終わりなき「筋肉増強競争」が始まろうとしている。果たして、彼らが対話のテーブルならぬ、同じパワーラックで汗を流す日は訪れるのだろうか。麗峰市の未来は、その分厚い胸筋にかかっている。

関係者のコメント

マッスルパトロール隊隊長「言葉はいらない。筋肉こそが正義のメッセージだ。最近、森から感じる視線が明らかに『好敵手』を見るそれに変わってきた。」
田中市長「行政の硬直化ではない、これは大胸筋の硬化だ！クマのバルクアップ？望むところだ。市民の安全は、より高重量のデッドリフトによって守られる！」
森のクマ（匿名希望）「最初はビビったけど、あの動き、明らかに三角筋後部を意識してるよね。見よう見まねでやったら、最近ハチミツの瓶のフタが開けやすくなった。感謝してる。」
地元猟友会会長（78）「ワシらの時代はマタギの知恵で立ち向かったもんじゃが…まあ、筋肉で解決するならそれも時代の流れかのう。プロテインの差し入れでもするか。」
動物行動学の権威「前代未聞のケースだ。哺乳類における文化の伝播は確認されているが、まさか種を超えてトレーニング文化が伝わるとは…。彼らは『森のジム』を形成しつつあるのかもしれない。」
プロテインシェイカー「シャカシャカ！俺を振るのが人間だけだと思うなよ！最近は力強すぎて壊れそうだぜ！」
市議会議員（棄権）「だから言ったんだ…。腰を据えて議論すべきだと…。うっ、腰が…。」
市の財政課職員「プロテイン予算の要求額が、市の教育予算を超えそうです…。もう笑うしかありません。」
ベンチプレス台「最近、森の方向から熱い視線と、かすかな獣の匂いを感じる…。まさかな。」
上腕二頭筋「出番か…。俺たちの出番なんだろ？わかっている。最高のパンプで応えてやる。」