「浴室熱唱法」成立、首相がシャワーヘッド型マイクで所信表明

国会は「浴室熱唱法案」を全会一致で可決。首相はシャワーヘッド型マイクを手に「歌声は国力」と熱弁した。新設の「風呂釜省」は防水楽譜とアヒルのおもちゃへの補助金を開始したが、全国での合唱が水道管の共振を招き、インフラ崩壊の危機に瀕している。

2025-11-23

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国会は18日、国民のストレス軽減と国家の一体感醸成を目的とする「浴室における表現の自由の促進及び歌唱を通じた国力増進に関する法律」、通称「浴室熱唱法」を、異例の全会一致で可決した。採決後、首相は湯気の演出が施された官邸の会見場に、特注のシャワーヘッド型マイクを手に登場。「歌声は国力である。一億総熱唱社会の実現で、我が国の未来は明るく照らされる」と、エコーのかかった声で所信を表明した。

この法律は、国民が浴室で心置きなく歌える環境を整備するもので、鳴り物入りで新設された「風呂釜省」が所管する。同省の初代大臣には、かつて「海峡の涙」で一世を風靡した元演歌歌手の波風かもめ氏が就任。早速、第一弾の政策として、全国の家庭を対象に「防水楽譜」と「公認アヒル型メトロノーム」への購入補助金制度を開始すると発表した。

波風大臣は記者団に対し、「歌は心。アヒルは友。正しい音程とリズムが、健全な愛国心を育むのです」と涙ながらに語り、補助金の財源については「国民の皆様の清らかな歌声が生み出す経済効果で、十分お釣りがくる」と説明。具体的な経済モデルの提示はなかった。

法案成立を受け、国民の反応は当初、歓迎ムード一色だった。SNS上では「#浴室フェス」がトレンド入りし、自慢の歌声を投稿する動きが活発化。大手カラオケメーカーは、浴室の音響効果をシミュレートする新機能を発表するなど、関連市場はにわかに活況を呈している。

しかし、この熱狂は思わぬ副作用を生んだ。夜の入浴が集中する時間帯、特に人気ドラマの主題歌が全国の浴室で一斉に熱唱されたことで、全国各地の水道管が共振。微細な振動が積み重なり、老朽化した配管に深刻なダメージを与えていることが判明したのだ。

国土交通省は緊急会見を開き、「このままでは全国の水道インフラが崩壊しかねない。これは静かなる国家の危機だ」と警告。東都大学都市インフラ工学部の管見（すがみ）教授は「そもそも周波数が近い人間の歌声が、特定の時間帯に集中すれば共振するのは物理学の常識。アヒルに予算を投じる前に、耐震ならぬ“耐振”工事の議論をすべきだった」と、政府の計画の甘さを厳しく指摘した。

事態を重く見た風呂釜省は、対策として「曜日ごとに推奨歌唱ジャンルを指定するガイドライン」を発表。月曜は演歌、火曜はロックという具合に歌声を分散させることで、共振リスクを低減させる狙いだが、専門家からは「根本的解決には程遠い」との声が上がっている。

「歌声は国力」のスローガンは、いまや国家の配管を文字通り揺るがす不協和音と化した。国民は美声をとるか、それとも安全な水をとるか。政府の場当たり的な政策が、国民に究極の選択を迫っている。

関係者のコメント

首相「歌声という目に見えない資産こそが、21世紀の真の国力だと確信している。水道管にはもう少し頑張ってもらいたい」
波風かもめ（風呂釜省大臣）「演歌のこぶしとロックのシャウトでは周波数が違う。これは科学的アプローチです。次は水曜にジャズを推奨します」
野党第一党党首「我々もつい『風呂場でくらい夢を見たい』と賛成してしまった。だが、インフラ問題は与党の責任だ」
管見教授（都市インフラ工学）「計算上、次のトレンドがバラードだった場合、ゆっくりとした振動が最も危険。国民は今すぐ歌うのをやめるか、BPM180以上の曲に切り替えるべきだ」
一般市民（匿名）「隣の家の演歌と、上の階のデスメタルが壁越しに共鳴して地獄です。断水より先に精神が崩壊しそう」
シャワーヘッド型マイク氏「私は水を出すのが本分。演説中にうっかり温水を出しかけて肝を冷やした。早く浴室に帰りたい」
水道管連合代表「もう限界です。毎晩毎晩、微妙に音程の外れた大合唱に耐えてきました。我々にもストライキを起こす権利があるはずだ」
公認アヒル型メトロノーム氏「補助金のおかげで仲間がたくさん増えて嬉しい。みんなで一緒にお風呂を盛り上げたいクワッ！」
今週のヒット曲さん「まさか自分の歌声でインフラが危機に瀕するなんて…。不本意です。作詞家と作曲家にも責任の一端があるのでは？」
海外メディア記者「Oh, Japan… また世界が理解できない法律を作った。次は『畳の上での昼寝の角度法』でも作るつもりだろうか」