市役所で発見の「申請書の化石」、担当課は「現在も審査中です」と回答

市役所の地下書庫から、平成初期に提出された「公園利用許可申請書」の化石が発見された。専門家が「担当者の『保留』印が幾重にも押された結果、圧力で化石化した奇跡の標本」と舌を巻く一方、市の担当課は「前任者からの引き継ぎ案件です。現在も厳正に審査中であり、結論はまだ出せません」と公式見解を発表した。

この世紀の発見は、市の書庫で進められていた「断捨離プロジェクト」の最中にもたらされた。職員が埃をかぶった段ボール箱の中から、明らかに紙ではない異様な質感の板状の物体を発見。当初は「誰かが昼食のピザを石にしたのでは」との憶測も飛んだが、鑑定の結果、約30年前に提出された申請書が原型を留めたまま化石化したものであることが判明した。

「古申請書学」の第一人者である国立超常歴史博物館の権田原（ごんだわら）教授は、この標本を「行政のアンモナイト」と呼び、興奮を隠さない。「幾重にも押された『保留』印のインクに含まれる特殊な無機物と、申請用紙のパルプ繊維が、地下書庫の一定した湿度と暗闇、そして何より『結論を出さない』という強固な意志の圧力が触媒となり、奇跡的な置換作用を引き起こしたのです。これは、官僚主義が物理法則に干渉した世界初の事例です」と学術的見地からその価値を力説する。

これに対し、市の市民サービス向上推進課の担当者は、冷静な面持ちで取材に応じた。「本件は平成3年に提出された『第一回町内対抗ゲートボール大会開催に伴う公園芝生エリア利用許可申請』と認識しております。申請者様には長らくお待ちいただいており大変心苦しいのですが、関連法規の改正や近隣住民への影響など、考慮すべき事項が山積しており、現在も関係各所との調整を含め、慎重かつ厳正に審査を進めている段階です。決して放置していたわけではありません」と、あくまで"現役"の案件であることを強調した。

取材班は、申請者である故・鈴木一郎氏（当時72歳）の行方を追った。孫にあたる三郎さん（55）は、我々の持参した化石の写真を見てしばし絶句。「祖父は生前、『役所の許可が下りたら、みんなでゲートボールをやるんだ』と、スティックを磨きながらいつも話していました。まさか申請書の方が先に冥土の土産になっていたとは。天国でひっくり返っていることでしょう。もはや許可が下りたところで、一緒にプレーする仲間は誰も…」と、秋空を見上げ、遠い目をした。

この一件は思わぬ方向へ展開している。市教育委員会が「行政の歴史と市民の忍耐を物語る貴重な資料」として、市の有形文化財への指定を検討し始めたのだ。市長も定例会見で「我が市の『丁寧な仕事ぶり』を象徴するモニュメントとして、新庁舎のロビーに展示することもやぶさかではない」と前向きな姿勢を見せている。

海外の行政学者からも問い合わせが殺到しており、「日本のレッドテープは岩石をも生み出すのか」「手続きの遅延がタイムカプセルを創造した」など、驚きと称賛（？）の声が寄せられているという。

審査の結論がいつ出るのかは、依然として不明だ。市役所の窓口では今日も、別の申請で待たされる市民が、化石発見のニュースをスマートフォンで読みながら、「自分の申請書が化石になるのは何年後だろうか」と呟いていた。市の「厳正な審査」は、次の地質時代まで続くのかもしれない。

関係者のコメント

• 化石化した申請書「もういい…もう、そっとしておいてくれ…」
• 市の担当者「前例踏襲と法令遵守が我々の使命です。スピードはサービスの質とは無関係です。」
• 権田原教授「ジュラ紀の恐竜の化石より、平成の役所の化石の方が、現代社会への示唆に富んでいる！」
• 鈴木三郎さん（孫）「祖父のゲートボールへの情熱が、岩をも通した…ということなのでしょうか。いいえ、違いますね。」
• 『保留』のハンコ「私に罪はない。押せと言われたから押したまでだ。」
• 地下書庫のホコリ「我々はこの30年間、全てを見ていた。歴史の証人だ。」
• ゲートボールのボール「あの…出番、まだでしょうか…？」
• DX推進担当大臣「……（無言でキーボードのEnterキーを強く押す）」
• 時間（という概念）「私ですら、この審査の終わりを見届けることはできなかった。」
• ライバル市の市長「我が市ならオンライン申請で3分です。化石を作るヒマはございません（笑）。」

国際表現

俳句

• 秋の空 許可を待ちわび 石となる
• 保留印 重なり積もりて 化石かな
• 窓口で 待ち人想うや 幾星霜
• ゲートボール 夢は地層の 底に眠る
• デジタル化 言えど書庫には アンモナイト
• 役所の地 時の流れが 違うのか
• 厳正に 審査重ねて 年代記
• 結論は 風化の果てに 出るのやら
• 孫の代も 知らぬ申請 苔生して
• 市の誉れ 化石となりし 丁寧さ

漢字

市役所地下 平成申請書 化石発見 担当課 厳正審査中 結論未定

絵文字

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擬

ペッタン、ペッタン、ペッタン……シーン……コツ、コツ……（数十年後）……ガリッ、ゴソゴソ……ザワザワ……カシャッ！

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