地下鉄「歌声荷物検査」音程でセキュリティ

首都圏地下鉄は混雑対策として『歌声荷物検査レーン』を新設。乗客はスキャナー前でドレミを歌い音程が合えば通過できる仕組みで、音痴だと手荷物を追加検査されるらしい。

2025-07-17

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首都圏地下鉄は混雑対策として『歌声荷物検査レーン』を新設した。乗客はスキャナー前でドレミファソラシドのいずれかをワンフレーズ歌い、AIの音程認証に合格すれば即通過できる。外せば係員の拍手とともに追加検査という、音楽教育と治安維持を同時に狙った一石二鳥(ただし耳は三鳥)の試みだ。

導入初日の朝七時、千代田線A駅ホームには“声紋つき行列”が出現した。マイク付きゲートは利用者の声帯振動をレーザーで測定し、A=440Hzを基準に±15セント以内なら緑ランプ、外れれば赤ランプが点灯する仕組み。ソプラノの高校生は一発合格、昨夜カラオケ帰りの会社員は二発不合格。機器メーカーは「治安よりピッチの方がシビア」と自慢する。

鉄道警備会社の説明によれば、声を出すことで不審者が心理的に萎縮し、荷物検査への協力度が25％向上。ついでに発声で胸が開き、荷物が見えやすくなる“姿勢効果”もあるという。ただし「半音下がると態度も下がる」というデータもあり、人間観察なのか音楽理論なのか研究者の譜面はカオス気味だ。

東都音大の冴島譜郎教授(音響犯罪学)は「音痴とテロリストを混同するのは文化的暴挙」と批判。「シューベルトはリズムが揺れるから全曲没収か」と怒り心頭だ。一方、治安社会学者の座間守氏は「合唱コンクール時代のトラウマが蘇り暴徒化する大人が出ないか心配」と、まさかの逆治安悪化を懸念する。

SNSには「寝起きでドは無理」「ミファソで痴漢も撃退」など歓喜と絶望の混声四部合唱が飛び交う。駅構内でチューナーアプリのダウンロード数が急増、通勤カバンにピッチパイプを忍ばせる新社会人も現れた。朝の改札はさながらストリートオーディション、審査員は黙々とSuicaをタップする後ろの客である。

規定は「声のみ」だが、バリトンサックスで音程を取るジャズ愛好家が現れ、係員がスウィングしながら許可した例も報告された。反面、ボーカロイドアプリで合格を狙った乗客は「機械の声は信用できん」と没収。人間だけが音程を外せる自由を保証されているようだ。

地下鉄運営会社は「慣れたら皆ピッチが合うので、来春からは転調チェックでセキュリティレベルを上げたい」と鼻息荒い。最終目標は“一人一オペラ”というが、利用客からは「だったら定期券を楽譜にしてくれ」と早くもカデンツァ級の突っ込みが飛ぶ。音程と治安、どちらが先に破綻するか、指揮棒ならぬ定規が震えている。