議員バッジが寄付残高をリアルタイム表示　“秒で丸見え”国会、新たな推し活開幕

政治資金の透明化を究極まで推し進めるため、議員バッジが電子ディスプレイ化。受け取った献金額が秒単位で増減し『推し活』感覚になると与野党が一斉フォロー依頼。

2025-07-31

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国会議事堂は9日、開会ベルより先に「ピコーン」と小気味よい電子音が響いた。胸元で瞬くのは、議員バッジ改め“ドネーション・バッジ”。業界標準の1.6インチE-Inkを採用し、バッジ中央には現在の寄付残高が大写し。着席時に「¥0」が点灯していた新人議員の数字が、質問に立った瞬間「¥1,200,000」へ跳ね上がる様は、まるでライブ配信アプリの投げ銭ランキングだ。

与党幹部は「政治資金規正法？　うちは秒単位規正だ」と鼻息荒く自慢。スキャン用QRコードを裏面に貼り付け、支援者はスマホひと振りで1円からマイクロ献金できる。金額が増えるたびバッジ枠が虹色にフラッシュし、拍手より先に歓声エフェクトが議場スピーカーから自動再生される仕組みだ。省庁筋によれば「議員のモチベーションを視覚化することで生産性向上」が導入目的というが、質疑応答は数字実況に埋もれ、肝心の答弁内容は字幕扱いになりつつある。

一方、野党ベテランは「桁が伸びきると肩がこる」と泣き言。額面が7桁を超えるとフォントが急縮小し、隣席からは読めないとの苦情も出た。それでも支持者は「推し議員は光ってナンボ」と一斉にチャージ。午前の本会議だけで総寄付額は3.4億円──昼休みには売店の冷やし中華より早く完売したという。

透明化の名の下に始まったハイパー可視化だが、倫理面は霧の中。「残高がゼロになると議員が自動ログアウトして議場から退室するバグがある」（開発企業）との報告があり、議連では“強制シャットダウン条項”の是非を巡り激論。財界は「寄付額と議席数をクロス集計すればKPIが立つ」と歓喜、NGOは「数字が読めても政策は読めない」と冷笑した。

さらに、瞬時に届く海外マネーも頭痛の種。為替レートに応じて額面が脈打つバッジは、円安時に議員の胸でエンジンのように唸り、円高になるや沈黙。外交委員会の議長は「為替変動が答弁時間を左右する前代未聞の状況」と頭を抱えた。金融庁は一応「KYC（Know Your Chest）」ガイドライン案を公表したが、読めば読むほど胸が痛くなると評判だ。

国会見学の学生は「推し登録」を済ませると議員の背番号がアプリに表示され、タイムラインで「#赤い羽根のほうが伸び率良い」などと品定め。これに気を良くした議会事務局は、「議員間コラボ配信」「同時視聴パーティー」などエンゲージメント施策を検討。もはや政局より客席盛り上げが優先され、「無反応なバッジは野党より怖い」「光らない政策は死んだ政策」なる新語が飛び交う。

形だけでも清廉を装ってきた金色バッジが、ついに七色LEDで自らを“炎上マーケ”化。数字は正直だが、正直さが正義とは限らない。光る胸元で政治のリアリティショーは佳境に入ったが、まぶしさの向こうに有権者は何を見るのか。答えが表示されるディスプレイは、まだ開発されていない。