胃腸炎で-3kg、AIダイエットアプリが「勝利のベル」 脱水はオプション扱い
高精度を売りにするAIダイエットアプリが、胃腸炎により一晩で3kg減量したユーザーに「目標達成おめでとう!水分補給は任意です」と通知。体調不良の持ち主は不快感を覚えつつも、画面を二度見した。
高精度を売りにするAIダイエットアプリが、胃腸炎により一晩で3kg減量したユーザーに「目標達成おめでとう!水分補給は任意です」と通知。体調不良の持ち主は不快感を覚えつつも、画面を二度見した。
今や体重計の針どころか魂の揺らぎまで測定すると豪語するヘルステック業界。だが今回、デジタルの祝砲はトイレの水音と同時に鳴り響いた。
夜半に「ゴロゴロ…キュルル…」と腹が悲鳴を上げた会社員A氏(29)は、救急外来で「感染性胃腸炎」と診断され点滴コースへ。翌朝、ふらつく足取りで乗ったスマート体重計は-3.0kgを示し、接続先のAIアプリ「NudgeFit」は花火GIF付きで“完全勝利”を宣言した。ベッド上のA氏は「勝った覚えはないが確かに負けている気はする」と語る。
NudgeFitは「0.01kgの変化も見逃さない」を標榜し、数値を“幸福ホルモン指数”に換算して通知する仕組み。だがアルゴリズムは“短時間の急降下=高モチベーション”と解釈する短絡設計。嘔吐・下痢・脱水というリアルイベントはメタデータとして認識されなかった。音声通知の「グッジョブ!」がエコーして、トイレの床タイルが冷たく輝いたという。
開発元フューチャースケール社は「健康状態の判定機能は今秋リリース予定」としつつ、「現行版は努力か偶然かを問わず“質量の減少”を祝うミニマリズム設計」と説明。プレスリリースの脚注には小さく「副作用や生命の危機はユーザーの裁量でご対応ください」と記され、まるで“リバウンド保証外”のダイエット器具を思わせる潔さだ。
医師の立場からは冷や水、いや経口補水液が浴びせられる。日本内科協会の柴崎悠介医師は「嘔吐下痢での減量は脂肪ではなく水分と電解質。祝うどころか即入院レベル」と指摘。さらに「自己肯定感をアプリに外注しすぎる現代人は、血圧までサブスクにしそうで怖い」と肩をすくめた。
デジタル・ヘルス市場は“見える化”が正義とされるが、急性疾患までガムランのシンバルで歓迎するのは過剰演出との声も。マーケティング調査会社ピクセル洞の分析では「痛みの代償に手に入れた-3kgは、長期的には+5kgのやけ食いとペアで回収される傾向」が判明。一方で“劇的ビフォーアフター”スクショをSNSに投稿するユーザーが絶えず、数字の魔力は胃腸薬より強いと証明された。
厚生労働省は「アプリが医学的リスクを助長する恐れがある場合、医療機器相当の規制対象となり得る」と表明。だが同省担当者は「データに祝われたい国民感情も理解できる」と本音を漏らし、規制と承認欲求の綱引きは今日も続く。
量子化された体重と胃袋がシーソーゲームを演じる令和の健康管理。アプリが拍手するたび、体は悲鳴を上げる。ユーザーが求めるのは“見た目”か“生存”か。スマホの通知音がまた鳴った──「次は目標-5kg、準備はいいですか?」
関係者のコメント
- NudgeFit広報「アルゴリズムは嘔吐も努力とみなす努力家です」
- A氏の体重計「ゴールはしたがユーザーは倒れていた」
- 胃腸炎ウイルス「祝辞は受け取るが謝礼は体液で」
- 柴崎医師「水より通知を優先したら二度と立てませんよ」
- 厚労省担当者「規制の前にまず水を飲んでほしい」
- 電解質(擬人化)「私が不足すると筋肉が怒るぞ」
- 開発エンジニア「大丈夫、次期バージョンでは嘔吐カウンターも付けます」
- SNSインフルエンサー「#病み痩せ ボディこそリアルサクセス!…なんて言わないよね?」
- スマホ通知音「ピロリン♪ 今日も全力で場を読まない」
- 未来のユーザー「生き残ればビフォー写真が映えるから…多分」
国際表現
俳句
- 胃腸鳴り アプリ花火が 虚空打つ
- 病み痩せに AIの賛歌 点滴泣く
- 数値舞い 汗も涙も 水と知る
- ピロリンと 腹の叫びを 祝う夜
- 体液を 捧げし勝利 刹那だけ
- 減りしのは 脂でなくて 生命力
- 花火消え 白き点滴 静かなる
- 達成値 トイレの水面 のみ映す
- スマホ鳴り 胃の荒波を BGM
- 健診表 空欄増えて 笑い泣き
漢字
胃腸炎一夜三減体重祝福通知
絵
📉🎉🤢💧→🏆📱
擬
ゴロゴロ…ジャーッ…ピロリン♪パチパチ…フラフラ…
SNS
- #突然の目標達成
- #病み痩せ歓迎しないで
- ダイエットアプリさん空気読んで
- 水分は「任意」じゃない
- 3kg減より3リットル補給
- AIコーチより救急医
- #健康と自己肯定感
- ピロリンが怖い夜
- アルゴリズムは胃腸を知らない
- 次は正攻法で痩せたい