汗が語り、筋が愛を叫ぶ　無声“マッチョロマンス”『フレックス・オブ・ラブ』初日から胸筋興収トップ

筋肉の収縮音とまばゆい汗のSEだけでストーリーを語る異色の恋愛映画『フレックス・オブ・ラブ』が封切られた。観客からは「字幕は要らないがプロテイン補給所は必要」との声も上がり、上映中には謎の胸筋拍手が発生した。

2025-06-30

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作品は台詞ゼロ、代わりに主演二人の二頭筋が終始高らかに“会話”を交わす。監督のダンベル井澤氏は「言葉は要らない、収縮は雄弁だ」と豪語。恋人たちのすれ違いを、左右交互のダンベルカールと断続的なパンプアップで表現し、最後は同調ベンチプレスで和解する構成だ。映画というより『ジム滞在記』との揶揄も、本人は「その通り」と胸を張る。

撮影は極限までリアリティを追求。マイクは汗の滴る軌道上10cmに設置され、“プシュッ”“ミシッ”といった繊細な筋線維の悲鳴を96kHzで収録した。音響監督は「ここまで来るとほぼ臓器ドキュメンタリー」と苦笑しつつ、爆発シーンの代わりにラットプルマシンの軋む音を混ぜ「音圧問題」を解決したという。

興行成績は初日で胸筋動員11万4千人。劇場前には急造の“プロテインバー”が長蛇の列を作り、豆乳シェイクがポップコーンと同価格で飛ぶように売れた。なお場内規定として「重量物の持ち込みは20kg以下」と掲示されたが、カバンにダンベルを忍ばせる観客が後を絶たず、入場口の金属探知機が「カーンカーン」と鳴るたび係員が注意を促す光景が見られた。

評論家筋（物理的に）も賛否両論。老舗紙の映画欄は「音響的挑戦は称賛に値するが、途中からスクリーン上のギラつく大胸筋が株価チャートにしか見えず、終盤はもはや暴騰」と皮肉。一方、フィットネス誌は星五つで絶賛し「名作『タイタニック』が船を沈め、『フレックス』は我々の内なる怠惰を沈めた」と胸を熱くした。

マーケティングも徹底して筋肉目線。劇場売店には「低脂質シート」のほか、汗を拭く用に“公式タオル”が880円で販売。裏面に筋繊維方向がプリントされ「拭きながら解剖学が学べる」として学生割引が適用された。またSNSでは「#胸筋和解」「#字幕よりタンパク質」がトレンド入り。詩的感想より摂取量報告が目立つあたり、日本の栄養学教育の未来は明るい。

一方、静寂の中で突然響く“胸筋拍手”は公衆マナーの議論も招いた。上映中に観客が胸を交互にバウンスさせることで感情を伝える行為で、隣席に伝わる振動が「4DXを超えた」などと好意的意見もあるが、筋のない人々からは「追い胸筋ハラスメント」との声も。配給会社は「心拍で手拍子の代替になる。むしろエコ」とコメントし、今後は座席に“筋反応センサー”を搭載するアップグレードを検討している。